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![]() 銀の匙 中 勘助 ![]() |
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![]() 1935年 岩波文庫 まうご犬のぐしゃぐしゃな書斎にはまるで不似合いな、じつにすばらしいホンモノの名作です。犬ごときが云々言えるような代物ではないのですが、犬はこの本を既に十回以上読んだにもかかわらず、今後も何度も読むことになるだろうと思うので、絶対に外せないのです。 なんで何度も何度も同じものを読むのか? …泣けるからです。 それも、いい年になってなお、大粒の涙をボロボロ流しながら嗚咽しながら、泣けるからです。すごいねえ。 読めば泣くとわかっていながら、やっぱり読んで泣く本は巷に確かにあります。代表格では「フランダースの犬」や「ごんぎつね」あたりかなあ。動物がらみで、理不尽な迫害や誤解の果ての寂しい死、というのはかなりキますね。でも「銀の匙」の場合はそれとは全然違う。いじめや陰湿なところはないし、描かれる世界はひたすら繊細で美しくて穏やかで、文章は淡々として、しかもとてもいい香りが漂っていて…。いったいなんでそんなので泣けるのかね、それが不思議で何度も読んでは、ミイラ取りがミイラになるが如く何度も大泣きしてるのだから、犬はバカだねえ。 病弱な主人公の少年が、お人好し故に貧乏に落ちぶれた伯母さんにやさしく世話をやかれながら、拾った土製の犬の人形や、紅のおまけの小さな丑などを宝物として大事にしつつ、少しずつ世界を広くして成長していくという話。後編で、おとなに近くなった主人公が、すでに遠く離れて暮らす伯母さんを訪ねて行ったときの久しぶりの再会を喜ぶ伯母さんの様子は、もう読まなくても脳裏に思い浮かべるだけで泣ける。老いて目もあまり見えなくなった伯母さんが、嬉しさに動転して主人公をもてなすために魚屋の鰈をあらいざらい買ってきて、その二十幾匹の鰈を煮付けて皿に並べるあたり。 なんなんでしょう、映画やドラマを見て泣いたことなどただの一度もない、このクールな犬の涙腺を完膚無きまでにぶちこわしてくれるこの本、最強です。 |
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