神泉苑

しんせんえん
 


神泉苑は「鳴くようぐいす平安京」でおなじみ桓武天皇が、
平安京造営に先立って計画し開いた広大な庭園です。
平安京は中国伝来の「風水」に基づいて造られたと言われていますが、
京都北山から南に下りてくる「龍」の水飲み場として神泉苑の池は機能しています。
ここで「龍」が水を飲むことで 「龍」の「気」がパワーアップするのですな。
「龍口水」とも呼ばれる、風水を考える上で大事な役割を担う神聖な場所です。

現在の神泉苑はかつての三分の一程度の広さしかないですが、
池を中心にこぢんまりとまとまった、風情のあるお庭です。  

御池通りに面した門を入って池にかかる石橋を渡ってすぐ右に恵方社。
正面奥に善女竜王社、左手には本堂に向かって法成橋がかかっています。
いつもなら夜は真っ暗で気味の悪い感じのところなのですが、
この写真を撮った12月31日だけは特別にライトアップされてます。
そう、毎年大晦日の夜に、ここでは重要な神事が行われるのですよ。
主役はこちら↓の「恵方社(えほうしゃ)」


恵方社は1m四方くらいの小さなお社です。
歳徳神(としとくじん)といって、恵方(その年の幸運の方角)を礼拝する日本で唯一の社です。
毎年大晦日に方角を変えて祀ります。つまり、向きを動かせる社なのです。
2002年では亥子の方向に向かって拝むようになっています。


夜10時半、住職が読経を始めました。
(現在では恵方社は真言宗東寺派の寺の一部です)
読経が終わるとおもむろに住職と寺男さんとで
社の底を持って、ずりずりっと廻し始めました。
へえー、取っ手もからくりもないんだ、原始的。
年の恵方は陰陽道で決まっています。
2003年の恵方は巳午(南南東)の方角ですから、
2002年とは正反対。動かすのも大変だわ。
住職はかなり細かく方向修正をしますが、
別に目盛りのようなものも無いようで
「大体このくらいの向きかなー?」
「もうちょっとだけ廻すかあー?」 てな感じ。
やっと向きに納得されたようで、あらためて
灯籠を置き直します。
これから一年間、恵方社はこの向きです。
もういちど住職が読経をして終了。
このあと参拝者が順々に社(恵方)に向かって
「柏手」を打って「お香」をあげました。
(変わってるねえー)
いつのまにか、お隣に「巫女さん」が移動してきて
お札とお守りを販売しています。
これも変だよねー、まったくの神仏混合。
住職はこのあと、いそいそと除夜の鐘を打ちに
行かれました。

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↑法成橋から池を臨む。水上には優雅な龍船が浮かんでいます。

池の中央にある善女竜王社ではかつて雨乞いの神事も行われたとか。
陰陽道の呪詛がらみの行事もかつては(といっても平安時代)行われていたようで、
なにやらちょっと恐い雰囲気の場所ではあります。


それにしても日本で唯一、年に一回だけの恵方社の回転という行事なのに
知名度が低いのか見物に来ている人はわずかに17、8人くらい。
ちょっとさびしかったなあー。
参拝のあと、本堂の横でおいしい年越しそばを無料でふるまわれました。
大晦日の京都は他にも見どころたくさんの場所が多いですが
この神泉苑の行事はなかなか面白いですよ。
ぜひ一度は見に行っていただきたいです。


実は8年前の大晦日の夜にも見に行ったのだけど、すでに廻っててガックリ。
その翌年も挑戦したけど、その時なんか昼にはもう廻ってたのよ。すげー悔しかったなあ。
当時は恵方社を何時に廻すのかっていう情報が全然わからなかったのよ。決めてなかったみたいで。
で、ずっと心の奥に引っかかっていたのだけど、このたびやっと廻す現場を見ることができて
ほっとしましたわ。ここ最近は大晦日の夜10時半回転開始に決まっているようです。
大晦日の京都はものすごく寒いから厚着して見に行ってね!


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神泉苑の場所や詳細については
こちらのサイトを参考にどうぞ。



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